N09  この物語はフィクションで 学校名 個人名 団体名は全て架空のものです。
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 N08   N10

 当日、ブロック大会の会場はPF学園。電車ではとても時間がかかるので車で分乗して行った。それでも道中は結構長かった。保護者の方は夏休みの練習試合で勝ったことは知っているので 公式戦の初勝利を信じて応援にも前回ほどではないが大勢参加してくれた。

第一試合  18 対 4  快勝できた。
まず 第一目標達成。夏休みほんとに一生懸命練習したので。努力が実って良かった。
保護者の方も公式戦の初勝利を喜んでくれた。
第二試合  26 対 14 次も終始リードして勝てた。
これで目標にしていたPF学園との決勝に臨むことができる。

 いよいよ決勝。

「先生、思ったほど、強そうじゃないやん!」
実際、相手チームをみて真由子が言った。いつも千里中央小と練習しているので 実はそれ以上強いチームは大阪にはほとんどないのだがそれ以上に うちにとってラッキーなことがあったのだ。

「そう、ラッキーなことにPF学園のメンバーは ほとんど全寮制の子なので夏休みには実家に帰って夏休み練習できてないんだって。」

 決勝戦の前に子どもたちに言った。
当時のスコアシートは各チームが大人のスタッフが少ないせいもあって子どもに書かせていたチームが多かった。
(今はハーフタイムで各チームスコアーシートをオフィシャルと照合するので大人が書いている場合も多い)

そのスコアシートを見ると 欄外に「決勝戦 かてる!! ガンバロウ」と書いてあった。
子どもの意気込みが感じられた。

第一クォーター終了時点で  6対5 わずか1点だが勝っている。
第二クォーター終了時点で  12対11 リードは1点のまま。接戦である
試合に出場できない子も 保護者の方も大きな声で応援してくれる。応援はとてもありがたく、ほかのスポーツでもよく言われるがバスケでいえば5+1 つまり6人目のプレーヤーなのである。

 しかし、さすがに優勝候補 夏休みほとんど練習できてないのに強い。その日の試合ごとにうまくなっている。公式試合で試合感覚を取り戻してきているのだ。
子どもたちもそわそわし出した。
「夏休み ほとんど練習しなくて、あんなに強いの? わたしたちは ほとんど毎日練習してたのに・・相手は3、4クォーターベストで来るでしょ。勝てるとは思えない・・」
相手の出方は1、2クォータ 総入れ替え つまり3,4クォーターはベストで来る。練習試合をたくさんしているので 子どもでもそれは理解できる。剛は思った。

(しまった。余計なことを試合前に言ってしまったか?)
 監督の選手起用や作戦が試合を大きく作用するのは大人のスポーツでも一緒なのだが子どもの場合、練習や試合の際のちょっとした一言が良くも悪くも大きな意味を持ってしまうことがある。剛はハーフタイムに別のアドバイスをした。
「いいか。たとえ1点差でも相手はあせっているんだ。その証拠にファールが多い。つまりディフェンスの気持ちはあるが夏の暑いときにしっかり練習しないと体がついていけてないんだ。練習は君たちを裏切らない!3,4クォーターはその差がきっと出てくる。ベストメンバーが来ようが大丈夫だ。いける。」

子どもの目から不安が少しづつ取れていった。

 3クォーター目 相手の5番が4つ目のファールをした。5回目のファールを恐れて ディフェンスが少し甘くなった。しかしオフェンス力は衰えない。3クオーター終了時点で20対17。まだ予断を許さない3点差。

最終クォーター
アドバイス通りになった。相手の5番が5ファールをして退場した。 6番もファール4つ目になった。これで流れは完全にうちに来た。相手がバテテきてオフェンス力も落ちた。結果25対19
優勝できた。2度目の奇跡が起きたのだ。保護者の方も、
「先生、感動しました。」
と言ってくれた。子どもたちのほとんどが泣いていた。三井さゆりは
「先生、私生まれて初めて嬉しくて泣いた。」
と言っていた。
スコアシートには 「優勝したぞ!」の文字が踊っていた。

 帰りに平島美香のお父さんが
「先生、やりましたな!」
そう言って急遽 その日祝勝会を開いてくれた。保護者の中から
「先生、ユニフォーム作りましょうよ。」という話になった。
「そう、いつまでもゼッケンじゃかわいそうですよ。」
「いや、ブロック大会でたまたま3回勝てただけですし、あと半年しかないですし・・」
剛はためらったが祝勝会参加保護者が来てない保護者を説得してユニフォームを作ることになった。

そこで少し問題が起こった
背中に「OSAKA」(大阪)の文字を入れるかどうか。
値段が少し上がるし、大人の発想では一度優勝したぐらいで何か調子に乗っているみたいで気が引ける。
しかし 子どもは違った
「近畿大会に出るなら、ユニフォームの「OSAKA」もいるでしょ。」
たった1回の優勝が、子どもごごろをくすぐった。

「わたしたち、シード校でしょ。全国は無理でも近畿はめざさないと。」

子どもの意見を尊重して「OSAKA」(大阪)の文字を入れることになった。

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