N15  この物語はフィクションで 学校名 個人名 団体名は全て架空のものです。
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 N14     N16(最終回) 

 震災で近畿大会がなくなったことを体育館の床に子どもたちを座らせて知らせた。

「君たちも知っているように、今回の震災で 兵庫県、特に淡路島や神戸から伊丹の方でひどい被害が出た。大人だけでなく子どもたちも死んでいる。みんなと同じようにバスケットをやっていた子の中にも死んでしまった子どもがいるそうだ。
その地域の小学校は、体育館に 家が全部壊れて、あるいは住むのには危険な状態ということで避難してきた方が生活している。そんな中で兵庫県の方で近畿大会をやる予定だったけど とてもできる状態ではないということで残念ですが近畿大会は中止になりました。」

子どもたちは真剣に聞いていた。なくなってしまって内心はすごくイヤな はずなのに
「エー」
とかいう子も一人もいなかった。子どもたち自身も怖い目にあったこともあるが
(大人の対応だな。もうすぐこの子たちも中学生か…)
そんな思いにかられた。
「このあたりの地域は、それほど被害も大きくなくて この体育館も通常通り使えている。ありがたいことだ。だから、毎年やっている学校対抗のバスケットボール大会を予定通り2月にすることができます。それを頑張ってください。このチームの18人だけでなくほとんどの6年生が練習や試合に参加するので、まだバスケットボールになれていない子にしっかり教えてあげてほしい。」
「はい。」
子どもたちの気持ちのいい返事が返ってきた。
やっぱり大人の対応。イヤ 神対応だ。

 その頃、近隣の小学校と毎年、女子はバスケットボール、男子はサッカーの試合を2月に、学校教育としてやっていた。親睦がメインだが試合である以上、勝ち負けがあるし3位以上には賞状も出た。緑北小学校は 社会体育のメンバーに加えて30人以上の子を試合に出場させ、目下8年連続優勝し、職員室前にズラッと賞状が並んでいる。
めざせ9連覇だ。

 だが そんな中 2週間ほどたって朗報が飛び込んできた。

 「捨てる神あれば拾う神あり」だ。
奈良県の先生たちが子どもの落胆しているのをみて
(各地でこんな子たちがいるはずだ。)と思い
計画を立ててくださった。電話で

「来られるチームだけで代わりの大会を開くことを計画しています。参加されますか?」と誘ってくださった。

「行きます。」

 独断で即決していた。勿論、保護者に話してもその決定に異論はなく早速打ち合わせを始めることにした。子どもを15人以上引率して宿泊もするわけなので、まず同行していただける多くの保護者を募らなければならない。そして役割分担。健康面や保険関係、会計や渉外など、一泊二泊するだけでも仕事量は3倍4倍に膨れ上がる。
 子どもたちは大いに喜んだ。地震の恐怖も味わっているので近畿大会には行きたかったけど仕方ないね。というのが多くの子の思いだった。
 それが場所は変わるが念願の遠征試合に行けるというわけだ。
 
しかし、
 
保護者の説明会や打ち合わせも進み、いよいよ2週間前。

奈良の先生から電話がかかってきた。
「今、お電話大丈夫ですか?」
「はい、何か?」
「大変、言いにくいんですが実は奈良の大会は中止になりました。」
「エッ!どうしてですか?」
「実は 奈良大会のことがKBC(近畿バスケットボールコミティー)の耳に入って『KBCが近畿大会を中止に決めたのに勝手なことをするなと』まあ圧力がかかっているというか・・・正式には手紙をお出ししますが・・・取り急ぎ連絡を先にしようと思って・・すいません。もう準備も進んでいるだろうに・・・」
「でも奈良の大会は私的な大会で別にKBCに連絡する必要もないと思うし、KBCからとやかく言われることもないと思うんですが・・・」
「そうなんですが、時期が悪かったんです。いろいろ大変ですし それに会場の都合やら配慮やらで全ての近畿大会に出る資格のある学校に連絡したのでもなかったんです。それが裏目に出て『何でうちの学校には声がかからないのか』という連絡がKBCに行ったらしいんです。」
「じゃ、その学校もいれてあげたらいいんじゃないですか。
 今さら中止と言われても保護者の準備も進んでいますし・・・。」

「申しわけ ありません。決定的なのは要綱に『近畿大会』の文字が入っていたことなんです。近畿大会は当然KBCの主催で それを主催者が中止したのに『奈良』で勝手にやるのはおかしいだろ。 ということです。何故か要綱も持っていて・・すみません。肝心な配慮が足りませんでした。」 

「あっはい・・・じゃ仕方・・ないですね。・・」

KBCの上層部が奈良の大会のことを問題にしたというわけだ。
「大人の事情」というやつだ。
 
剛の体から血の気が引いた。
(そんな・・・)

中止なのは勿論ショックだがそれ以上に・・

その一週間前に こんなことがあった。

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